通信№59 セミナー報告
2017年度第2回自立セミナー
介護の現場でおこること
2018年3月17日(土) 講師:三田優子さん(大阪府立大学准教授)
2012年に「障害者虐待防止法」が施行され、虐待はいけないことと皆わかっているはずなのになぜ起こってしまうのか? 私たちは支援者として身近に起こる虐待問題とどう向き合っていくのか?について三田先生にお話を伺いました。その一部を紹介します。
この障害者虐待防止法では、虐待とはどのような行為を指すのか。殴る蹴るがいけないことは皆さん判っていますね。「自分は絶対にそんな事はしない」と思っているでしょう。
では、例えばこんな事はないですか?
「○○ちゃん」とちゃん呼びや名前を呼び捨てにする。赤ちゃん言葉で話す。「良い方法を教えてあげる」など介助者の都合で誘導する
付き合いが長いから…利用者さんが可愛いから…利用者さんのためを思って…と、たとえ悪意が無かったとしてもこれらが虐待に繋がる事があります。いつの間にか上下関係ができてしまい、当事者が言いたい事を言えなくなってしまい、我慢を強いられているかも知れないのです。
ここで一つ例を挙げて考えてみましょう
ある虐待体験者Aさんの発言です。ここで問題なのは何でしょうか?「僕はグループホームに住んでいました。そこではおいしいご飯を出してもらえませんでした」ここで問題なのは何でしょうか?
参加者からは「冷めていた?おかずがなかった?味付けがされていなかった?」等の答えが出ましたが、実はこのケースでは、世話人が自宅で余った腐った食材をスープにして提供していたのです。一見「味付けが好みでなくても仕方ない。わがままなのでは?」と捉えられてしまいそうですが、よく話を聞いてみると重大な訴えが隠れていることがあるということでした。介助が必要な障害者で『私は虐待を受けています』とはっきりといえる人は殆どいません。みんな気を遣ってしまったり、障害の種類や程度によっては自分が虐待されていると分からずに苦しんでいる人もいます。そのような状況にいち早く気づくためにも、普段何気なくしている会話の中でも少しでも気になることは「それどういうこと?」としっかりと『聴く』ことが重要なのです。
後半は紙とペンを用意して作業をします…
三田先生 『今から私の話すことを皆さんに紙に書いてもらいます。「始めます」と言ってから
話すので聞いたままを書いてもらうだけです。『終わります」と言うまで、その間は声を出さず、周りの人に見られないように書いてください。』
「それでは始めます」
「まずしかくをひとつかいてください。なにかかけましたでしょうか? ではそのうえにまるをみっつかいてください。なにかかけましたか?」
「終わります。さあ皆さんどんなものが書けましたか?周りの人と見せ合ってみてください。」
…会場は一気に騒然となりました。驚きの声や笑い声、理由を一生懸命説明する人もいます。
【しかく】を【四角】と捉えたのか【資格】としたのか?はたまたそのまま速記するタイプまで。…でも、誰も間違いではないのです。
『同じ話を聞いても人により受け取り方や感じ方が違うことがある』ということです。
だからこそ報告・連絡・相談が重要なのです。感性の違う人たちが集まり様々な視点から考え意見交換することで、利用者の異変や隠れた本心やSOSに気付くこともあります。
最後に、皆さんは休みの日にリフレッシュできていますか?休みの日にまで仕事のことを考えていませんか?支援者がストレスを溜めている事も虐待につながる大きな要因です。悩みは一人で抱えず誰かに相談しましょう。とのお話でした。
今回はセミナーとして開催しましたが、今後もヘルプセンターゆうの現任研修として第二弾・第三弾と続けていこうと思います。
✤参加者の感想✤
「もっと相手の話をよく聞くようにする」「自分の気持ちや体調に余裕がない時など、利用者さんに遠慮させてしまう様な事がないように気を付けたい」「他の支援者に相談するようにする」等・・・(飯塚)