「聴けてますか?本当の声」 ~差別解消法と自己決定支援を考える~

今年度2回目の自立セミナーは、2017年2月17日に「聴けてますか?本当の声」
~差別解消法と自己決定支援を考える~を開催させて頂きました。
 講師には、障大連の細井清和さん、NPO法人障害者自立生活センター・スクラムの姜(かん)博久(ぱっく)さんをお招(まね)きし講演(こうえん)をお願(ねが)いしました。

【細井清和さんのお話】
 今日のテーマは、「差別解消法と自己決定支援を考える」です。
障害者権利条約を踏まえつつ、障害者のおかれている状況を確認し、障害者差別解消法及び、改正障害者雇用促進法、さらに、大阪における差別解消について見ておきたいと思います。巻末には、虐待防止法についての参考をつけておきます。虐待は、全国ワースト1である。
 障害者の置かれている状況は、前提となる、障害者権利条約があります。
大きな特徴として、医学モデルから社会モデルへと転換されています。医学的に着目するのではなく、社会的なことを考えることに変わった。
 「社会モデル」とは、障害者の「生きにくさ」の原因は、障害そのものというよりも、道路・建物の物理的なもの、情報や文化、法律や制度、市民の意識上の障壁との相互関係から生み出されているという考え方です。
 「医療モデル」は、障害を「治す(なお  )」べきものとして医者などの専門職による治療の対象とする視点。歩けるまで訓練しょうという考え方。「歩行できない」という機能障害について、「歩行できるようにする」ことで社会参加を図るというのが「医療モデル」の視点です。障害を持つ人は、現実として様々な障壁(バリア)によって日常生活や社会
生活を制限されています。わかりやすく言いますと、4つの障壁(バリア)、1 物理的障壁、2 制度上
の障壁、3 文化(情報)の障壁、4 こころの障壁、障壁を無くすことは健常者にとっても利益をもたらすものである。普段の生活を考えてみると、どこに差別があるのかな、と思うかもしれません。でも、実は、生活のあらゆる場面に差別は潜んでいます!差別には、3つのパターンがあります。
 「間接的差別」=差別を理由に、ほかの人と違う取り扱いをされること。
「間接的差別・関連差別」=障害を理由にしていないが、結果的に違う取り扱いをされる。
「合理的配慮をしないこと」=機会の平等のための調整や配慮がたりないこと。
 合理的配慮とは、他の者との平等を基礎としてとあるが、障害者に特別な権利を与えましょうという事ではない。他の人が持っている権利を障害者にも与えましょうという考え方です。合理的配慮の考え方には、危険性もあります。均衡を失した又は過度の負担を課さないもの(障害者権利条約第2条)と但し書きがついています。これは、仕方がないでしょうという事も認められていく。ただし、固定的にするのではなく、ダイナニズムを持って変わっていく、基準を変化させていく、その前提にあるのがインクルージョンです。
いろいろな場面での排除されている現実、保育などは、障害がある為に保育所入所を断られたり、就学に関しては、障害がある為に希望する地域の学校に断られる。医療的ケアを要する児童には、親が給食などを食べさせに行くといったことがある。行事の参加にも親が同伴を求められる。就職問題は、いじめ、就職口が見つからないなど。交通は、渡し板がないため待たされる。まち構造では、段差、階段だけの建物、放置自転車等。お店に関しては、入店拒否、入店できない店構造や本人無視、狭い通路。住宅に関しては、入居拒否や(家賃債務保証事業者)による拒否。生活問題は、入所施設の建て替え問題など。
冠婚葬祭などは、参加しにくい雰囲気、医療は、受診拒否や入院中の困難、地域に関しては、近所付き合いの難しさ、「施設コンフリクト」。人間関係は、家族、友人との関係の難しさなどなどがある。障害者虐待防止法の基本について、目的として、「障害者の尊厳」「自立と社会参加」を護る。虐待の禁止、虐待の予防及び早期発見。また、虐待を受けた障害者に対する保護。養護者に対する支援の措置。虐待者の処罰を目的とする法律ではない刑事事件、民事事件に相当する場合は別途、刑事訴訟法、民事訴訟法に則る。
 障害者虐待の定義は、3つの虐待場面があり、1、「養護者」~養(やしな)い護(まも)る人→家庭。2、「障害者福祉施設従事者等」~福祉サービス従事者→施設やサービス現場(ヘルパー含む)。3、「使用者」~労働者を指揮命令監督する立場にある経営者、管理職、労務担当者~職場。教育・保育や医療現場については、3年後(2015年)見直しと言われていましたが、未だに見直しはされていません(2016年7月現在)。
 5つの虐待内容は、1、身体的虐待(外傷が生じる程度)。2、性的虐待、わいせつ行為。3、心理的虐待(心理的外傷を与える程度)。4、ネグレクト(養護者としての義務を著しく怠ること。他の同居人による虐待を放置することを含む。)福祉サービスの従事者としての職務を著しく怠ること。(他の利用者による虐待を放置することを含む)。障害者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置。(当該事業所に使用されている他の労働者による虐待の放置を含む)。5、障害者の財産を不当に処分すること、その他不当に財産上の利益を得ること。
 ヘルパーと当事者との間で、親しいから当事者を「ちゃんづけ」でよぶといったことは、第三者からみれば、虐待にあたる。第三者の目であるとか、自分自身が虐待にあたらないか点検は怠らないことである。もう一度、当事者とヘルパーの関係性を見つめなおすことが大事である。

【姜 博久さんのお話】 
 当事者の立場から、お話をさせていただきます。
差別解消法という法律は、これほど身近になった法律はないんじゃないかと思います。障害者にとって近づいた法律である。
 去年の夏休みに久しぶりの長期休暇を頂き、岡山県K市に行(い)きました。そこでの出来事ですが、美術館に行き、備前焼の体験もしました。美術館に関しては、幅がかつかつで段差も何とか解消していました。
 少し問題なのは、美術館横にある昔の街並みを再現した場所で、そこに民芸館やお土産屋が入っている場所で、民芸館は20cm程の段差が2段あり渡し板を置いたら終わりで入れない、一緒に行ったヘルパーさんに見てきてと頼んで、自分は外で待っていました。
 また、お土産屋さんに行ったら、オルゴールが置いてあるから入ろうと思い。段差も解消されていました。しかし、入り口に入ったら商品が、所かまわず置いてあり、車いすで入ったら商品をぶつけてしまいバラバラと商品が崩れるので入り口以上行けない状態でした。
ここでも、外で待つことになりました。極め付けは、泊まったホテルに、なんと波型手すりが付いてある。大阪に帰ってきてから、楽しみにしていた旅行が半減したと、観光協会にクレーム及び改善の電話をしました。ちょっとした工夫で、車いすの方などが楽しめるのではないか、障害者は口に出して言わないといけないのか?
 
法律が、整備されてきてバリアフリー法が出来てきて、なんば、梅田で映画館が出来てきた。映画館は、スクリーンの数を増やして、いろいろな映画を上映して利益を出している。通路は階段であったりと、通路側は安全を確保する場所になっているので、障害者は一番前に席を確保される。頚椎症の方は地獄でしかない。こんな状態で、映画を見ないといけない、これは、間接差別ではないのか?
花園ラクビー場は、車いす座席はあるが観客が総立ちになると、まったく見えない。前の人の背中しか見えない。この問題は、整備されているのか?
 大阪市の地下鉄は、1ルートはEVが設置されているが、近鉄なんば駅から阪神西九条と結ばれた。障害者自立生活センター・スクラムは、その沿線上にあるので便利になったが、難波線の桜川駅のすごさ、ええかげんせ!と思いました。すごさとは、交差点には信号はついていない、乗降人数も多くない。でも、交差点4つともEVが付いた。1駅に4つです。そこは、大阪府もお金を出すことになった。第三セクターである。ところがどっこい、千日前線の桜川駅と阪神桜川駅が繋がっていない、千日前線桜川から阪神桜川駅はかなり遠くなるし雨の日が最悪だ。矛盾した交通整備である。
 車いすの方は、エスカレーターは使用できない。危険があるからである。EVがある限り、車いす専用のエスカレーターはできない。このような意義を考えて、黙っていたら何も変わらない!窓口に出向いて、最大限の手立てを考えさせることはできる!怒って、文句を言おう!エンパワメントを忘れずに!
 こんなことがありました。視覚障害の方が、駅員にパスを見せて通ろうとしたら駅員が「もうちょっとちゃんと見せろ」と言われた。相手は、視覚障害者であるのに「見せろ!」とは失礼にもほどがある。健常者ならわかるが、視覚障害者をわかっているならば、1歩2歩近づいて確認すればいいことである。スクラムから、交通局の担当部署に電話を入れると、担当部署の担当の人間性もあるんでしょう。「そうしたら?どうすればいいんですか?」と言われた。「なんちゅ~ことや」と思う。
 最近は、地下鉄はアナウンスが多くなっている。「両脇で電車をお待ちの方は、車いすのかたが居ますので気を付けてください。」とか障害者の方が、居ますのでとか、視覚障害者とは言ってないが、何か納得できないことがたくさんある。
傘の持ち方、リックの担ぎ方など・・・どういった対応がとれるか、精一杯考えてほしいと同時に、障害者も手を挙げて、発言していくことも大事である。一緒に壁を壊していきたいと考える。自分が嫌な思いや、おかしいと思う事があったりして、それが解決したら終わりじゃなくて。自分と同じ障害者が同じような場面で出くわした時に、違ったニーズがあるかもしれない。他の障害者の為の事も頭に入れながら改善を求めていくことが次のステップとしてのエンパワメントじゃないかと思います。
 ILPをしながら思うが、嫌な思いをしても、その場では言えないし言い返すこともできない。でも、黙っていることは良くない。どう言えば相手に伝わるのかという事とを考える。
 一緒に、要望書を書いたり考えたりしていて、本人が、ちゃんと相手に伝わるようにアクションを取れるようにしていく、自己決定支援が伝わるようにしていくことが大事である。それと同時に、他の障害者の事を考えて問題定義をして行く。同じ過ちをしないでほしい。差別解消法とは、社会をよくするツールでもあるが。障害者が一皮も二皮も成長していくため法律でもある

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